「何だ・・・?」
ただならぬ空気を感じ、男は空を仰いだ。
こんな空気を感じるのは初めてだった。
男だけではなかった。
国中の人々がこの世の終わりとも言える恐怖を感じていた。
その夜。
今まで決して輝きの絶えることのなかった国に、初めて沈黙が降りた。
長い間誰もが恐れ、しかし誰も口に出そうとしなかったことが起きてしまった。
地球の遥か上空に浮かぶ『光の惑星(ほし)』。
生命あるものはすべて光り輝き、常に希望を持ち続けることの出来る世界は存在した。
一方、その反対側には光の惑星とは正反対の『闇の惑星』が存在するのもまた事実だった。
光の惑星の住人は悪を好まず、闇の惑星の住人は善を好まない。
故に、闇の惑星の住人は光の惑星を攻め滅ぼす計画を企てた。
光の惑星の上空は既に真っ暗になっていた。
皆が空を見上げる中、1人の男が叫んだ。
「っ伏せろ
」
直後、街は燃え上がった。
* *
「なんか毎日いいお天気でしょ? だからそろそろあの子、外で遊ばせてあげてもいいかと思って昨日から走り回らせてあげてるの」
光の惑星の王宮の庭で、2人の婦人が楽しそうに話をしながら散歩していた。
あの晩、闇の惑星が光の惑星を襲ってきたのは確かだった。
襲撃は一度だったにもかかわらず、街は衰え光は消え失せ、一瞬のうちにして人々は死んでいった。
けれど今、惑星は元通り
いや、かつてないほどの美しさで輝き溢れていた。
「王様も幸せよねー。貴女みたいなキレイな奥さんがいて、あんなカワイイ娘がいて」
「なっ何言ってんのよぉ。貴女こそ惑星一番の騎士の檀那様がいて、あんなに美しい息子までできたじゃない」
二人の婦人はしばらくの間、自分の子供のことを自慢気に話しながらクスクスと笑っていた。
「あの子たち、仲いいわよね・・・」
木陰のベンチに腰掛けたあと、王妃アルラは噴水の傍で無邪気に遊んでいる子供たちを見ながらパフェットに静かに言った。
「ええ・・・とっても」
「カーナが18歳になった時、私はあの子が私を継いでくれるとは思うんだけど・・・ノーブル君・・・王になってくれるかしら?」
「大丈夫大丈夫。今も楽しそうに遊んでるじゃない。絶対2人で貴女たちのあと継いでくれるわよ」
「そう・・・そうよね」
パフェットとアルラは子供たちが王と王妃になった未来のことをあれこれ想像し、当事者たちは3歳にも満たないことなどすっかり忘れ、いつまでも陽気に笑っていた。
その頃、カーナとノーブルは噴水の裏、ベンチからは見えないところで遊んでいた。
「かーなたーん」
「なーにーのーくん?」
「あっちになんかあるよー」
「なんらろー? いってみよーよ」
「うん」
カーナとノーブルの姿が消え、アルラとパフェットがそれに気づいたのは、小1時間後のことだった。